小林農園の日々

別れの朝。

いつもの朝。

30以上も歳の離れた近所の老紳士と、いつものように、散歩コースでお会いし、ご挨拶。

いつもと違って娘さんも伴って。
「お世話になったね」
「いよいよですか」
「連絡先書いたから持ってきたよ」
「さみしくなりますね」
「また4月には戻るよ」
紙袋を渡して、朝日に映える田んぼ道を振り返らずに歩いて行きました。

つい先日、独り暮らしが心配だからと在京の娘さんたちが呼んでくれたんだ、と朝の散歩で聞いたときに、うっかり「さみしくなりますね」と呟いたら、「まだ信じられないんだよ」と、昨年冬に急逝された奥様の在りし日を語られた老紳士。一年を迎える時期をひとりで暮らすのは耐えられない、と。労りあって仲睦まじく歩いていた光景。

「また4月には戻るよ」
ちょっとぶっきらぼうな感じだったけど、きっと、毎朝連れ添って二人歩いていた散歩コースて、また4月に元気で会おう、そんな思いで、一歩前に歩いたのかなぁと、自然に溶け込んでいく老紳士と娘さんの姿を見つめた朝でした。

別れの朝。前向きな朝でした。